芸術の秋。朝起きて曇り空。今日は横浜・山下埠頭で開催中の横浜トリエンナーレ2005を見に出かけることになっている。 「行こうよ」といったのは女房。「だって子供無料だよ。こういうのって見せておいたほうがいいよ、絶対。アタシも見たいし」ということだ。主体性がないわけじゃないが、別にワタシは出かけられればどこでもいいのだ。日曜日に1日家に居るととてつもなくムダに過ごしたような気分になる。 10時過ぎに新丸子を出た。東横特急で元町・中華街駅へ。マリンタワー横を通って山下公園。港内遊覧船乗り場のすぐ横に早速コンテナをアーチ状に組み上げたアート作品「スパイバンク」がそびえる。その先の「横浜トリエンナーレ2005」と書かれた青いコンテナが入口だ。入場料は大人一人1800円。割引券で200円引き。場内は写真撮影禁止。 埠頭に紅白の旗が風に吹かれてはためく。ずっと会場までの約500mほどをこの旗が彩る。これももちろんアート作品だ。 会場は山下埠頭3号、4号倉庫。倉庫の広い空間を利用しているので大きな作品の展示もOKだ。入ると目の前に工事現場の”足場”で組まれた大きな階段が。昇って降りるだけだからトマソン流で云う”純粋階段”だね。娘と昇って降りる。たったこれだけですでに気分が上がっている。アートってのは精神の発露だね。 広い会場を右往左往。おおよそ7つに区切られて展示されている。一見しての印象はまず映像を併用したインスタレーションがかなりの割合を占めているということ。以前はアートといえば”彫刻”や”絵画”などを一般としていたが、今は空間の演出やモノの配置、パフォーマンスなどで表現するアートが増えてきている。そういう”アート”を一般的にインスタレーションと呼称するのだが、その用語については未だ定義が確定されていないという議論もあるらしい。ま。そんな堅苦しい話は後にして(^^;。 アート作品について全部の話をしていたらいくら書いても足りないので、一番印象に残った作品について書きたい。作品名は「回転回」。会場内の至る所に立てられた三脚。そこにはビュワーが据え付けられて何気なく佇んでいる。覗いてみる。目の前の風景に何かが写りこんでいる。目の錯覚か?もう一度ビュワーから目を離して現実風景と見比べる。うーん、なんだこれは!何気なく覗いたものだっただけに不意を突かれた。ビュワーの中の世界では確かに何かがグルグルと回転していた。 2510301.jpg
いろいろなところに立てられた三脚のビュワー。他のお客もなんだろう、きもちわるいね、とか何とか云いながら全部覗いている。よく分からなかったが惹きつけられた。 そのおおもとの展示は一番目立たない場所にひっそりとブースがあった。たくさんのデジカメとケータイが三脚に据えられて並んでいた。近づいてみるとデジカメもケータイも動画再生モードになっており、液晶ディスプレイでは映像を映していた。「ミギカイテン、ミギカイテン」「ヒダリカイテン、ヒダリカイテン」とデジカメが発する機械的な音声とともに写っていたのは、ありもしない全身タイツ男が床を回転する映像だった。見た瞬間ゾゾゾっと身の毛がよだつ想いがした。 いろいろな角度・距離から、ありもしない全身タイツ男の回転する映像を、さもそこで今回転しているかのごとく機械的に再生(撮影?)しつづけるデジカメたち。「ほら、そこに居るよ、見えないの?」と機械から言われているような気がした。 映像の持つ本質的なオソロシサをこれだけ身近にある機械を使って端的に表現するとはネ。参りました。会場至る所にあったビュワーもこの展示のアレンジで、ありもしないのに写っていたのはこの全身タイツ男の回っている映像だった。 映像には”事実が写っている”、という感覚を人間はなぜか持ってしまっている。写っているものは無批判に事実と受け取ってしまうもろさがある。昔小さい頃TVでさんざん見せられた宇宙人の映像やUFOの写真。はてはアポロの月着陸も捏造だったと聞かされた。映像は実際には”作られている”ものだ。映像に関しては事実と感覚の間になぜか開きがあり、この展示を作った作家さんはその点を突きたかったのではないだろうか。現在を映しているようで映していない。でもここにあるすべての機材が映しているということは本当は今ここで起こっているのではないか、という錯覚。ウラのウラがホントになる。ありえないことが起こりうる危うさ。映像のオソロシサである。 映像として一旦見てしまうと、それは記憶となって実物を見ていないのにその場所を見ると全身タイツ男が回っている映像が目に浮かぶようになる。それはあくまでも映像の記憶なのだが、時がたてばそんなものはあいまいになり、全身タイツ男が回っていたことだけが記憶として定着してしまう。さも目の前で回っていたかのように・・・。 従来のオブジェクト的な展示もあったが、今回はこの「回転回」にとどめを刺す。鑑賞する作品というよりもどちらかといえばコンセプチュアル・アートだが、驚かされたという1点では完全に他を引き離していた。 昼飯を”中庭”で食べる。深く坐る椅子にかけ、売店でエビスを買ってきた。休日・アート・缶ビール。ウマイねぇ(^^)。 16時頃には一旦店に戻り、17時から近所のホテルでバイキングの夕食。マグロのあぶり焼きが絶品。質の高いデザートを腹が一杯になるまで食べた。ああ。罪悪感(^^;。食欲の秋。 2510302.jpg