甘露日記

古本屋甘露日記 http://www.kanroshobo.com

2003年10月

金曜、明古。

朝、目が覚めると8時前。息子がワタシの布団を跨いだ時にぶつかったか(^^;。
丁度いいや。と起き上がる。今日は明古だ。少し気合を入れる。

少し早めに起きたおかげで今日は店を30分早く出ることが出来た。早起きは三文の得?12時過ぎには新丸子駅のホームに居た。電車の中ではやはり森山大道氏「犬の記憶」を読む。アサヒカメラに連載されたと言う幻想的な本編よりも、その後に附された自伝的写真論の方が”わかりやすい(^^;”ので楽しめる。写真家を志す以前の森山氏の行動や興味の範囲。写真家岩宮武二氏に弟子入りする様子や、東京へ出て細江英公氏の元で助手を務めることになった経緯。独立してカメラ毎日の編集長・山岸章二氏に見出される過程が克明に描写される。その後に中平卓馬氏と出会い、寺山修司氏に認められ、同人誌プロヴォークに加わって活動する様子が活写された。暇さえあれば本を読んでいたという森山氏の文章は、写真家とは思えないほど雄弁に情景を描き出す。
読めば読むほど、氏の写真は氏の中にある情景を紙に転写する行為なのだな、と感じた。

さて、神保町。今週は神田古書まつりが開催中。靖国通りは人だかり。本屋さんの前のワゴンには幾重にも人の波が押し寄せる。すごいなぁ。きっと全国の愛書家が集まる一週間なんだろうな。ワタシが神保町の書店員をしていた時も、この一週間は売り上げが良かった覚えがある。

さて、明古。欲しい本が出ている。でもあの本はこの間の大市で買ったからなぁ・・。などと思いながらもつい精一杯入札してしまう(^^;。一通り入札して昼飯。久しぶり(^^;に並玉。紅しょうがを肉の上に直接載せてしまうと、ただでさえ生卵で冷やされている肉がさらに冷たくなる。卵をかけて空いた器に紅しょうがを盛り、つまんで食べることにした(^^;。ドーデモイイコトカ・・。
食べていると女の子3人組みが入ってきたり、ワタシの目の前に女の子が一人で食べに来たり・・・。牛丼屋のイメージも変わったのかな?

開札が終わるまでローライ35を片手に古本まつりで賑わう神保町を歩く。潜在需要というか、いざとなれば本のことを求めたいと思っている人がこんなに大勢いるんだ、とわかって気分が前向きになる(^^)。

市場に戻る。欲しかったカメラの本と岡本太郎さんの画集(署名入!)が落札できた。川崎に店がある以上、岡本太郎さんははずせない。

両手に本で帰宅。

駅前

今日は珍しくお店で1セット全集が売れた。

30冊以上ある全集だったから、大きな箱を探した。本を詰めると25kgにもなった。お客様のご希望があり宅配便で発送することにした。受け付けてくれる近所のコンビニまでエッチラオッチラと持っていくと、今まで呉服店だったお店がコーヒー屋(豆販売)さんに改装されていた。

店に戻ってオヤジに言うと「和服はもう着る人が少なくなったからね」というお定まりの科白のあと、話は続いた。
新丸子はもともと第三業地のある花街だった。昔からの街道筋で川を隔てた向こうとこっち側は料亭などが犇めき合っていた。同じ東横沿線では綱島も鶴見川を境に花街が発展した。
新丸子は今じゃ当時の面影も残っていないけど、ウチの自宅裏のあたりは一面に料亭と置屋がズラッと並んでいたらしい。そう言われてみればワタシの小さい頃には綱島街道沿いにストリップ小屋があった記憶がある。あんまり関係ないか・・・。
「オレの小学生の頃には新丸子の信号の際にあったマーケットの場所にダンスホールがあったんだよ」と興味深い話。「そこがつぶれた後は一度空き地になって、盛り土がされて土俵が出来てた。相撲大会も開かれてね。」へぇー。「マーケットになったのはその後だよ。そこで買ったパンにジャムを付けて毎朝食べてたよ。」そのマーケットも数年前に取り壊され、現在はズドンとマンションが建っている。
「綱島街道沿いの小学校前あたりにはカフェーがあってね」よく覚えてるなぁ。にしても結構洒落た街だったんだな、新丸子って。なるほど駅前に呉服屋さんが何軒もあるわけだ。

この数年で商店街も随分様変わりしてしまった。昔から営業していたお店が突然閉店することが珍しくなくなった。この商店街が出来た頃からいらっしゃった方が高齢になり、後継者が居なかったということなのだろうか。代わりに入るテナントはケータイ屋さんだったり、ドラッグストアだったりしてなんだかなぁ、という感じ。料亭や置屋だった場所にマンションが立ち並び、昔の新丸子を知る人もどんどん減っている。他所とは違う歴史を刻んできたはずのこの街だけど、駅前にズラリと放置自転車が並ぶような何処にでもある私鉄沿線のベッドタウンになりかかっているような気がする。

ダンスホールがあって、カフェーがあって、料亭に置屋があった頃の新丸子をちょっと見てみたい気持ちになった。

1日店

いい天気(^^)。1日店でシコシコと仕事。

夕刊のコラムに目が止まった。「わかりやすいことはいいことか」という題。ドイツの哲学者の言葉らしい。
現代社会で”わかりやすい”というのは売り文句になる。日日のニュースをわかりやすく解説するニュース・ショーは人気が出る。”わかりやすい”ことが人々に受けいれられているのはまず間違いない。
ところが、ドイツの哲学者は「わかりやすいということは、わかりにくいことを隠すことだ」と言う。実際の世の中は複雑怪奇でわかりにくいものなのだけれど、それがわかりやすい形で提供されているということは、わかりにくい部分を隠しているだけだ、と言うのだ。

我々は日日世の中で起きている事件を実際に目にする事はほとんど無い。ニュースや新聞などで知るのみだ。本当の事実は当事者しかわからないのが当たり前だが、それではニュースにならない。実際に起こった事件を取材し、報道する人が居る。我々はメディアを通してのみ事件を知る。メディアに触れない限り、自分の身の回り以外の出来事を知ることは難しい。
取材した素材をTVでそのまま流すことはまず無い。放送前に内容を”わかりやすくする”ための編集作業が必ず入る。この”わかりやすく編集”されることが現代人から考える力を奪っているのではないか、というのがこのコラムの主旨だ。
「自らの努力で、もう少しわかりにくい部分をそれなりにわかろうとしないと、本質からは、どんどん遠ざかることになる。(中略)自らが、理解したうえで、やさしさを獲得し、自らの手で安心・安全を獲得しないといけないのだが、それは他人がしてくれるものであって、自分はそれを享受すればいいということが根底にある」と手厳しい。

わかりやすいニュース・ショーが、もし、誤った報道をしていたとしたらどうなるか。事の本質に自分から迫ろうとしない人は、そのデマゴギーに簡単に騙されてしまうだろう。わかりやすいニュース・ショーが起こしたダイオキシン報道による風評被害は記憶に新しい。

・・とはいえ、自分で何もかも判断するには大変な労力と勇気が要ると思うし、メディアなしの状況では実際には無理だ。どうしても報道から素材を抽出し、自分の価値判断に照らして情報を取捨選択していく以外に方法は無い。

”わかりやすい”ニュースを喜んで見ているととんだ落とし穴が待っている、とちょっと怖くなりながら・・・(^^;。

工事終了

昨夜はカーテンの無い状態で寝た。

壁紙も貼り付けに備えて剥されたまま。まるでプレハブの仮設住宅(^^;。カーテンの有無で部屋の”生活感”がまるで違ってくることがよくわかった。部屋は西向きにもかかわらず朝起きた時明るさが普段よりケタ違いだった。ウルトラマリンの青空が目にしみた。

今日も9時から壁紙張りの職人さんが作業開始。10時頃に襖屋さんが襖を引き取りに来てくれた。夕方には張り替えて戻してくれるそうだ。
午前中からオークション出品作業を全開で。今日は出品料が正午まで只になるキャンペーン中。

昼飯は女房が買ってきてくれた。幼稚園から戻った娘と3人で2階の作業場の本に囲まれたスペースで昼飯。女房は娘の希望でパン。ワタシは近所の持ち帰りすし屋さんのランチ(390円)とカップ麺(カレー味)。とろけるサーモンを食べ終えて、これから出来上がったカップ麺の蓋を取ろうとしたところで職人さんに呼ばれた。作業が終了したとのこと。見に行くと、今まで剥されたままだった壁に新しい壁紙がピッチリと貼り付けてあった。今まで鶯色だった部屋が白く塗り替えられた感じ。部屋が数倍明るくなった気がする。すばらしい!(^^)

のびかかったカップ麺を平らげたあと、オヤジと母親にお披露目する。「明るくていいねぇ」「随分広く感じるわねぇ」そりゃ家具が空だもの・・・(^^;。
今回の工事もあれだけあった家財を一旦別の場所に移した女房のお手柄だ。ワタシは仕事にかこつけて何にもしなかったからなぁ(^^;。
いい機会だから生活を見直すのもいいかもしれない。要るものと要らないものの選別。結局置ける場所があるとついつい要らなくなったものでも”取っておこう”という気になってしまう。取って置いた挙句にボロボロになって捨てることになるんじゃ何にもならない。まだ使えるうちに何とかする。これからはこう行きたい。
ダンボールに詰め込んで積み上がっている家財。元の場所に戻す前に少し考えながら開梱出来ればいいな。

午後も仕事を続ける。先日買ってきた本の山はまだまだ高い(^^;。
夕食の時、お祝いに、と近所のスーパーで買ってきたうまい”安”白ワインで乾杯(^^)。お疲れ様。閉店後、ご注文いただいた本にお返事のメール書き。いつもお買い上げありがとうございます。

あとは昨日発見された新たなる雨漏りの補修か・・・。

工事開始!

朝は7時起き。外は雨。

今日は壁紙・天井張替え工事当日。昨日までに女房がいろいろとごちゃごちゃしたものを函詰めしてくれていた。ワタシはそれを邪魔にならない場所へ移動する。布団を押入れに仕舞うと、まるで引越し当日の部屋のようにがらんとした。この部屋へ越してきた日を思い出す。あの時のように喋り声が妙に反響し、鼓膜を揺さぶった。

息子は8時前に学校へ出掛けていった。残った3人はトースターで焼いたロールパンを食べ、女房と娘は着替えて幼稚園に行く準備。ワタシは居間で使っていた卓袱台代わりのコタツを別階に移動する。すでにこのコタツには電源コードもない。子供たちが小さかったことと、部屋が狭いこともあってもう7年以上灯が点ったことはない。

8:40。外に工事のクルマが到着。大工さんだった。天井の張り直し担当。早速ベニヤ板を運び込んでいた。その間を縫って女房と娘が降りてくる。いってらっしゃい。
9:30には女房が戻ってくる。早速工事の人にお茶を出してもらう。10時過ぎに大工さんの仕事は終了。10時半になってオヤジ到着。そのあと壁紙張りの職人さんが来て、お一人で仕事を始めた。
11:30。少し早めに昼飯。雨の中、近所の洋食屋さんへ。夫婦二人だけで外食なんて子供が生まれて以来初めてじゃないかしら。食べながらいろいろなことを間断なくしゃべった。

普段居る場所が工事で入れないと女房は行き場所がない。作業場の所狭しと置かれた本の隙間で振替用紙の記入作業をしてもらった。ワタシはその傍らで本の入力と発送作業を間歇的に。
14時過ぎに娘が帰ってくる。母親に歩いて5分の場所にある実家へ連れて行ってもらった。16時頃帰ってきた息子は友達の家へ遊びにいくと出掛けていった。夕食は実家でご馳走になってくる予定。

工事終了は18:30。後は明日の午前中で完了するとか。思ったよりも早い。
女房が掃除機を掛けていたところ、なんと新たな水漏れ箇所発見(!)。でも場所が妙なところだった。天井ではなくて足元。先ほど帰られた工事責任者の方へ電話して診てもらうと「外のタイルが割れてますね・・・」確かに窓枠すぐ上のタイルが割れていた。ここから水が伝って床のすぐ上から出てきているようだった。割れの原因は特定できないが、地震かもしれないとのこと。今日壁紙を張る前の箇所だったので発見できた。

夕食は夫婦でお弁当。明日も9時から工事。

1日店

昨日は弟夫婦が来たし、そのあと荷物の片付けをしていたので出掛けなかった。

代わりに中途半端に見ていた「ギャング・オブ・ニューヨーク」の続きを見た。マーティン・スコセッシ監督。硬派な映画だったなぁ。DDルイスすごい。
19世紀のニューヨーク。まだ無秩序だった街が唯一の秩序たる”暴力”によって徐々に秩序立っていく様を描いている。ギャングの抗争。より強い者が君臨し、人々を秩序立てる。男っぽい抗争の末に街の頂点に立つ者。しかし、最後には国家権力による暴力によって排除され、その結果街は近代化していく。
普段日本で暮らしているとあまり意識することはないが、現代社会もある種の暴力によって秩序が保たれている。国外に向かっては軍隊。内に向かっては警察だ。この映画によれば、19世紀当時のニューヨークは大量の移民が入ってきたり、南北戦争があったりして秩序どころの騒ぎではなかったらしい。

それにしても、こういう映画を見ると”古き良き時代”という言葉が決まって浮かんでくる。近代化することが良いことで”進化した姿”と本当に言えるのだろうか?という気持ちになる。
当時も貧富の差はあった。現在もある。逆に当時あった血のたぎるような気持ちを現代の人は持っているのだろうか・・・。人間の本能としての暴力性はなくならない。それは新聞で報道されているように、各地で頻発する武力衝突の記事を読めばわかることだ。暴力性は人間なら誰もが持っている性質だ。社会秩序として正当化された暴力が存在する一方で、その社会秩序のために暴力性を抑圧している。これは矛盾だ。どうしても歪む。

先般、大国が「将来武力攻撃を仕掛けてくる可能性のある国に先制攻撃する」という理由である国に攻め入った。ワタシにはこれこそ人間の持つ矛盾の発露ではないかと思える。
ならどうすればいいのか、なんて答えを持っているわけじゃない。この映画を見て浮かんできた感想を言ったまで。

オヤジたちは今日休みを取って出掛けた。
今日は月曜日。ワタシは相次ぐご入金に対応し、荷造り作業に没頭。女房は店番の傍ら、いよいよ明日に迫った工事に備え最後の備品整理に忙しい。子供たちは相変わらず(^^;。息子は棚の本やら紙を片付けられ「本が読めない」「絵が描けない」と文句たらたら。娘はキャッキャ言いながら女房の周りにまとわり付く。邪魔しないでヨ(^^;。

そう、工事はいよいよ明日だ。
ギャラリー
  • 2024.3.18. ほぼ1日店
  • 2024.3.17. 西国分寺-お鷹の道・真姿の池湧水群-北府中
  • 2024.3.16. 土曜日
  • 2024.3.15. ほぼ1日店
  • 2024.3.14. 定休日3
  • 2024.3.13. 定休日2
  • 2024.3.12. 定休日
  • 2024.3.11. ほぼ1日店
  • 2024.3.10. 鎌倉-極楽寺-稲村ヶ崎
記事検索
アーカイブ
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

  • ライブドアブログ